俺的微妙小説その10『人形館の殺人』

綾辻行人が書いたこの推理小説、微妙である。※ネタバレ全開

この小説、マネキンが置いてある館で殺人事件が起きる推理小説で、いつもとは違い主人公の一人称視点で
進んで行き、マネキンに血のような絵の具が付いていたり家の前に猫の死体が置かれるなど嫌がらせを受け、
遂には脅迫状が届くようになり放火され母親が殺されるという事件が起き、更に住人で作家の男が密室状態で
殺され主人公が昔の列車事故や友達を川に突き落とした事件に関わっておりそれが犯人の動機であることが
判明するなどまあ悪くはなく、最後はシリーズお馴染みの探偵役島田潔が登場し、犯人は主人公の友人で
密室殺人は部屋に隠された抜け穴を使って行っていたといういまいちな推理をするがそれはフェイクで、今まで
探偵のように振る舞っていた人間は実は主人公の別人格で抜け穴も存在せず、殺人事件は主人公の更なる
別人格が行っていたというサイコ展開になるのはまあ良いのだが、結局主人公なだけにカギを持っており
トリックがなく犯人の人格も最後は出て来ず、館にある無数のマネキンも向いている方向に母親の顔に似た
マネキンが埋められていたというだけで必要性が薄く他のシリーズとは違いお馴染みの建築家が関わっていない
のはいまいち面白味がない。
色々と異色すぎて館シリーズの外伝という感じだが、もう少し館の特徴を活かしたようなトリックが欲しい
ところだろう。

というわけで、色々といまいちな今作。
主人公が多重人格で犯人というのはPSのゲームでもあったが、サイコ系は豹変ぶりが面白いだけにそこは
活かして欲しいものである。
inserted by FC2 system