俺的微妙小説その8『異邦の騎士』

島田荘司が書いたこの推理小説、微妙である。※ネタバレ全開

この小説、記憶喪失になった主人公を描いたストーリーで、街で謎の女と知り合い同棲を始めたり御手洗という
変人の占い師と知り合いになるが突然女がヒステリーになり実家に帰ると言い出し、主人公は女が隠し持っていた
自分の免許証を手がかりに自宅を見つけ自分には妻と子供がおりすでに死んでいたことを知り、更に日記を
発見し妻は詐欺に遭いその犯人に自殺に見せかけて殺されていたことが明らかになるのだが、描写が無駄に
細かくテンポが悪いのはいまいちで、主人公は妻のカタキを討つために犯人の一人を殺したことが日記に書かれて
おり、もう一人の犯人を殺そうとした時に返り討ちにあい記憶を失ったことを思い出し再び犯人を殺しに行くが
なぜか実家に帰っていたはずの女に邪魔をされ誤って刺殺してしまい、更に占い師の御手洗があの日記に
書かれていたことは全て嘘で免許証の住所も主人公のものではなく同棲していた女もグルで主人公を操って
ターゲットである女の父親を殺し遺産や保険金を得るために偽の記憶を植え付けていたと推理し、グルだった
女も同棲する内に主人公が好きになり最後は計画を自分で止めようとしたことが明らかになるなど感動的な要素も
あり最後は主人公がようやく本当の記憶を取り戻し御手洗シリーズで毎回登場するワトソン的な石岡であることが
判明するなど綺麗に終わるのは良いが、殺人の計画をした黒幕である女の兄とは特に対決するシーンはなく妹が
死に計画が失敗しあっさり諦めるのは呆気なくいまいち盛り上がりがない。
結局死ぬのは主人公が刺した女だけというのも推理小説としては物足りないが、この無駄に長い日記や描写は
改善すべきだろう。

というわけで、色々と微妙な今作。
島田荘司はチック・コリアという作曲家が好きで浪漫の騎士というアルバムが作中でも紹介されているが、
まとまりがなく全く良さが感じられずどこが良いのか分からないのは謎である。
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