俺的微妙小説その4『メビウスの殺人』

我孫子武丸が書いたこの小説、微妙である。※ネタバレ全開

この小説、最初から犯人が分かっているタイプの推理小説で、事件は接点のない人間が各地で殺されて行く
というABC殺人事件のような展開で事件のテンポが良く犯人側と捜査側の視点で交互に状況が語られるのは良く、
現場に残された数字の書かれた謎のメモの筆跡や殺害方法が2種類あることから捜査側は2人の人間が交互に
殺人を行っているのでは?と推理し、段々と被害者の名前がしりとりになっていることに気づき先手を打って
犯人を捕まえようとするなど駆け引きもあり悪くはないのだが、途中で犯人とは関係ない人間を警察が捜査するが
言動からして犯人じゃないのがバレバレなのはいまいちで、犯人側が探偵側に接近するシーンもあるがあまり
意味が感じられず、最後は犯人は二重人格で2つの人格が交互に事件を起こしメモはマルバツゲームで遊んで
いた
ことなどが判明するなどそこはまあ良いが、逮捕があっけないのはいまいち物足りないものがある。
もう一人の犯人の正体については叩いている読者も多いようだが、もう少し探偵との頭脳戦を描いて欲しい
ところだろう。

というわけで、色々と微妙な今作。
今作に似たような内容の殺戮にいたる病は我孫子武丸の最高傑作と言われているが、あちらのラストの仕掛けは
分かりにくい上にそれほど必要性が感じられないだけに今作の方が面白いと言えるかもしれない。
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